SPECIAL
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2024.05.10
特集『アナタとフクシ』
今回は、相談支援事業所の相談員が「福祉との出会い」についてお話をさせて頂きます。福祉サービスを利用したい、障害のある子どもの子育てのことで相談をしたい、進路について悩んでいる、就職をどうしよう、お金のことで相談したいなどなど・・・。
たくさん悩みはあるけれど『何を・誰に・どのように相談』したら良いのか分からない方も多いのではないでしょうか?
具体的なお話をもとにいろんな形で繋がる福祉についてご説明し、より福祉を身近に感じてもらいたいです。
まずは身近なところに相談することから全ては始まります。
(ケースA)
小学校に通うお子さん。はじめて福祉サービスの利用を考えられ、どうしようか?と悩まれています。
【ケースの概要】
地域の小学校に通う小学3年生の男の子のご両親から相談がありました。お子さんは、軽度の発達の遅れとADHDの診断があり支援級在籍に在籍されています。児童クラブ利用中です。
ご両親は共働きだそうです。これまで、大きなトラブルなく学校・児童クラブで生活を送ってこられたそうですが、学年が上がり学校の授業の理解が難しくなってこられました。それと同時に「俺は頭は良くない」との発言が多くなってきた様子がありご両親も心配されています。
そして、児童クラブでも友達からからかわれる事が多くなってきたということです。ある日から「学校に行きたくない」と行って、行き渋るようになってしまいました。
このような状況を受けて、これまで福祉サービスの利用は考えたことがないご両親でしたが、同じ支援級の友達が放課後等デイサービスに通っている事を両親が知り、放課後等デイサービスに興味を持たれましたが、どうしていいかわからない状況で、近くにある相談支援事業所に相談に来られました。
POINT 1 「知りたい情報を得ることができる」
このケースの場合、放課後等デイサービスという名称だけを知っておられる可能性が高いため、具体的なイメージを持つために近所の事業所の情報を提供した。
また、事業所によって特徴が異なるため、ご家族にご本人の性格やキャラクターなどをお聞きし、より相性が良さそうな事業所とのマッチングができる。
放課後等デイサービスというのがあるとだけ聞いて知っています。どこにどんな事業所があるのかまだわかりません。
なるほど。わかりました。
ご自宅から利用されやすい事業所は、以下の事業所が挙げられます。
A事業所
比較的穏やかに過ごされる子どもが多く、室内遊びが中心。おやつは自由に選べる。
B事業所。
活発な子どもが多く、基本は公園遊び。指導員は男性が多い。
C事業所
宿題も見守りや声掛けを行ってくれる。指導員も多いので、大人との関わりを持ちやすい。
うちの子のタイプ的には、B事業所のようなところが良いかなー。
POINT 2 「利用できそうなサービスの情報提供を行える」
このケースの場合、放課後等デイサービス以外にも、日中一時支援や障害があっても通える習い事の教室、学校以外にも学びを保障できる場所などの情報も提供できる。必要に応じて多様な生き方を選択できるように、様々な情報をお伝えできる。
福祉サービスのことがよくわからないですが、とりあえず、今は放課後等デイサービスで、いろんなことを経験してくれたら嬉しいなと思っています。
そうですね。
事業所によって、様々なプログラムが用意されているので活動を通してたくさん経験を積むことができれば良いですね。
経験を積む機会としては、他にもヘルパーさんとお出かけができる(移動支援・行動援護)サービスもあったりします。高学年から中学生にかけては、ご家族以外の方と、社会経験を積む良い機会になるかもしれません。
また、学習支援を中心に行ったり、家以外の場所でゆっくりと過ごすことができる日中一時支援事業もあります。
福祉サービスも様々あるので、また都度ご相談させていただければと思います。
へー。結構いろんなことができるんですね。
POINT 3 「手順について説明することができる」
このケースの場合、放課後等デイサービスの利用を希望されるかもしれないので、見学する事業所の選定~事業所の決定~受給者証の発行の手続き~事業所との契約まで利用までのプロセスを相談しながら進めることができる。
例えば、B事業所に通いたいと思ったらどのようにすれば良いですか?
相談支援事業所を利用して「サービス等利用計画」を作成するかセルフプランと呼ばれるご家族で作成されるサービスの利用計画を市役所などに提出し、【受給者証】を発行する必要があります。
作成にあたっては、どのサービスをどのくらい利用するのかを計画書に記載する必要があります。
その【受給者証】を持って利用する事業所とご契約いただくことで福祉サービスを利用していただけます。
※発行のためには、障害の証明が必要となるため、障害者手帳を持っておられるとお手続きがスムーズです。
(ケースB)
お母さまが子育ての中心。何からどう始めて良いか・・・悩まれています。
【ケースの概要】
とある保育園の年長クラスに在籍されている男の子のお母さまが相談に来られました。
現在、保育園では加配の先生がついておられるそうです。発達の遅れが指摘されているが、診断名は分からないとのことです。
小学校に上がるのを機に、賃貸アパートから市内の一戸建てに引越しする予定とのことです。お父さまは仕事が忙しく、育児はお母さまが担っておられるとのことでした。小学校に進学後は、お母さまもパートでも良いので働きたいと希望されておられます。今も家庭では、急に癇癪を起こすことや食べ物にこだわりがあるなどの育てにくさがあるため、できれば子どもの発達を促すような療育施設に通わせいと思っておられます。土地勘がない場所へ引っ越してくるため、何からどうしたらいいか悩んでいるとの相談でした。
POINT 1 「引っ越し先の住所地にある相談機関に繋ぐ」
このケースの場合、新生活の準備と同時にサービス利用の段取りを行う必要があるため、ご家族と協力して手続きを行うような支援を行なっていく必要があると考えられます。引越し前から、電話やメールなどで、細かくやり取りを行い調整を進めて行きます。また、基幹相談支援事業所(たくさん情報を持っており、転居してくる際の手続きにも詳しい機関)とも連携し手続きを進めていくことができます。
4月に滋賀県草津市の〇〇に引っ越す予定です。できれば、早いタイミングでサービスを利用し始めたいです。
わかりました。
お住まいになられる〇〇だと、□□相談支援事業所がお近くにあります。その事業所は基幹相談支援といって、市内の福祉サービスに詳しい事業所とも連携しているのでより詳しく情報を持っておられるかもしれません。
私からお繋ぎさせていただくことも可能です。
ご家族が、このまま私に計画相談を担当してほしいというご希望であればそれも可能です。いかがでしょう。
家から近いところの方が相談しやすい感じがするので、紹介してもらっても良いですか?
もちろん、大丈夫です!
POINT 2 「専門機関を紹介し、現状を知ることができる」
このケースの場合、発達年齢に応じた支援を組み立ていくことが必要だと考えられます。診断や障害者手帳の取得など、今後必要になりうる情報についても提供させて頂くことができます。ご本人にとって、どのようなことが大切なのかを一緒に考えていくことができます。
子どものことがよくわからない状態で、癇癪を起こした時の対応にも困っています。
対応が難しいですよね。
現在のお子様の状態を発達検査などを通して、理解していく方法もあります。
場合によっては、医療にも繋がり、服薬を行うことで落ち着くお子様もいて、その対応は様々です。お子様の状態を、知るための方法を一緒に考えさせてください。
POINT 3 「学校の選択において情報提供を行うことができる」
地域の学校と支援学校との違いなど、支援者から見た視点での情報をお伝え出来るので、参考にして頂きながら、今後の進路について検討していくことができます。
進学にあたってはすごく悩みました。巡回相談では支援級の方が良いと言われました。家族で話した時は普通学級で良いだろうとなりました。今は支援級と決めましたが本当に良かったかはまだわかりません。
それも判断が難しいですね。
お子さまが安心して通うことができる環境が一番だと思いますが行ってみないとわからないことも多いですね。
相談支援事業を利用いただくと、学校等とも連携してご本人の様子を見ていくことができます。これから一緒に考えさせていただければありがたいです。
(ケースC)
ライフステージが変化し、何をどこから手をつければ良いのかと悩み、相談に来られたケース
【ケース概要】
30代女性、療育手帳をお持ちの女性が相談に来られました。一般の企業に障害者雇用で勤めておられ、月8万円ほどの収入があるとのことです。
現在は両親と暮らしておられますが、高齢で要介護状態となり困ったとのこと。
両親にはケアマネージャーの担当者がおられ、デイサービスやヘルパーさんが支援に来られる予定らしいのですが、説明が難しくよく分からない状態のようです。
家賃や光熱水費の支払いをしなければいけない状態ですが、お金の管理はこれまでご両親がされていたため、ご本人は分からないとのこと。家事も両親に頼ってきたので、助けてほしいとの相談でした。
POINT 1 「ご本人の人生に伴走させていただき、希望する生活が実現するようなお手伝いをすることができる」
このケースの場合、生活状況が変化し生活に関する様々なことがわからない中でご相談に来られました。不安な気持ちに共感をさせていただきながら、今後頼っていける場所や使える制度についてわかりやすくご本人にお伝えすることができます。
お母さんもお父さんも、介護の方で色々しなあかんことがあります。わたしもよくわからないことばかりだしお金のことも困ってます。
急なことで、大変だったと思います。
こうやって今日相談に来てくださったので、これからのことを一緒に考えさせてもらえたらと思います。
今、一番心配なことは何ですか?
お金の支払いやね。紙が来ているけど、よく分からない。
なるほど。お金のことが一番心配なのですね。
お金のことを一緒に考えてくれる人を見つけましょう。
権利擁護事業という事業があって、一緒にお金を管理してくれる支援がありますが、早速連絡を取ってみましょうか。
POINT 2「紹介だけでなく支援機関へ同行し顔繋ぎも行う」
このケースの場合、ご本人が主体的に動いていくことが必要となります。様々な理由で事業所等で赴くことが難しい場合でも、支援者がいれば同行支援をすることができます。
(病院や市役所などでの手続きなら、福祉サービスを利用することもできる)
権利擁護事業の担当者さんが○月○日だったら予定が合うそうです。よければ一緒にどのような人か場所かを見て説明を聞いてみませんか。
一緒に来てくれはんの。それやったら、”少し”安心。
POINT 3「計画相談を利用することによって長いスパンで関わらせていただくことができる」
現在困っておられる状況を解決するために様々なサービスや資源を活用していくが、計画相談支援を使うことでモニタリング(定期的に面談を行い様子を伺う)ができ、何か新しい困りごとや心配事があっても相談することができる。
(計画相談の利用契約も完了し、サービス等利用計画も作成したのち)
これから、ヘルパーさんに来てもらって家のことも助けてもらいます。
そうですね。
相談員も定期的にモニタリングをさせていただきます。何かあればその都度ご相談くださいね。