BIVOUAC
2024.11.19
特集『ロングインタビュー:ビバークの現在地』
no-deの相談支援事業所『ビバーク』が開所してから、約半年が経過しました。
この短期間で、ビバークはどのような歩みを進めてきたのでしょうか。
現在の活動状況や抱いている想い、そして今後の展望について、no-deの共同代表であり、元・相談支援専門員でもある高木氏が、ビバーク相談支援専門員の藤本氏にインタビューを実施。
これまでの活動の成果や課題を振り返りつつ、ビバークが目指す未来について深掘りしていきます。
no-de共同代表 高木氏
相談支援専門員 藤本氏
“ビバークらしさの正体”
(高木)
– ビバークが開所して半年経ったので、ここで1回きちんと皆さんにビバークの状況をお伝えしたいなと。半年間いろんなことあったと思うんですけど、まずはどんな流れで今に至るか、振り返ってもらえたら嬉しいです。
(藤本)
4月に開所させてもらって右も左も分からない草津での開所だったので、すごく端的に言うとすごく悩んで苦労した半年だったなという感じです。
大きくはまず、馴染んでいくための半年間だったなという感じがあって。
利用してくださる人にも、支援をしてくださる支援者さんにも、地域にも馴染んで行くのにようやく最近馴染めてきたっていう感覚なので、振り返るとそういう半年間だったなと思います。
– なかなかお手伝いもできず申し訳なかったんですけど、藤本さんが本当に1人でここまでしてくださったっていうのは感謝でしかないんですけど。
ビバークの利用者さんの状況は今はどんな状態ですか?現在成人が何人とか、実際新規受け入れもしていますか?みたいなことも含めて教えて下さい。
現在は約50名の利用者さんがおられて、割合としては9割が児童、1割が成人になりました。
新規受付は今一旦ストップしていて、それでも問い合わせが続いているという状態です。
– 初めの想定だったら、もうちょっと成人の比率高くて、児童を抑える感じだったんですけど、フタを開けると児童の問い合わせが多いんですね。
そうですね。この頃は特に増えたという印象です。
– ビバークのことを藤本さんにお聞きするのに、ちょっとビバークらしさが出るまで待ってたんです。
で、やっとなんか最近になって「ビバークだから選んだ」とか、「相談してよかった」っていう声が周りからも出てきたので、その辺りのこと聞きたいんですけど。
僕がふだん藤本さんと話してる中で聞くのは、「相談員ってこんなことまで聞いてもらえるんやね」「感動したんです」って利用した方に言われるエピソードというのが結構印象的なんですけど、いわゆるビバークらしさってそういうところにあるんだろうなと僕は思っていて。藤本さん的にビバークらしさって他にどんなところがあると思いますか?
その質問をお聞きしてパッと思いついたまず1つ目は、システム的な話なんですけどモニタリング期間っていうのが相談支援はあって、利用してくださる方とお出会いさせてもらう期間なんですけど、それが短いのがビバークとしての特徴としてあって。
草津市内でも大体半分ぐらい、多くの事業所が半年に1回モニタリングしてて、ビバークは1ヶ月に1回から3ヶ月に1回ペースのモニタリングなので、出会う回数が多いんですよね。だから、その都度何かあったら細かに相談できるっていう。
周りからよく聞くのは、相談しようと思ってたけど次会うのが半年後だからもう悩みじゃなくなってしまったみたいなことがあって。
それがこうビバークだと細かく聞けるっていうのは1つの特徴なのかな?って思ったのが1つ大きく思い浮かんだところですね。
あとは、福祉サービス以外の悩みみたいなのもビバークなら聞けますよ、っていうのを最初に説明させてもらっているので、例えば学校の先生とうまくいかなかったとか、進路先どうしたらいいかとか、どこの病院かかったらいいと思うかとか、兄弟の話とか、そんなことも相談してもらう機会が結構増えたなって感じがして。
で、そういう時って「あ、わかんないです。」で済ませられるのかもしれないんですけど、ビバークの場合そこで「ちょっと1回調べてみますね」とか、僕が知るうる限りでの情報提供したりするのが、ご家族的にも本人的にも聞いてもらえてよかったみたいなことで思ってくださるような感じがあるので、それもいわゆるビバークらしさに繋がってるのかなって思っていて。
その2つが大きく特徴としてあるのかなと思います。
– なるほど。モニタリング期間が短くて出会う頻度が高いとタイムリーに本人がしんどいことをキャッチできるし、サービス以外の悩みも聞けるってなると、結局その人の生活により密着できてる感じ、寄り添えている感じがビバークらしさかもしれないですね。
で、相談支援してると相談を聞いた後に何かに繋ぐ出口を探すことになるじゃないですか。
サービスを使っていくであったり、サービスじゃなくても他の解決方法もあるんでしょうけど、藤本さんはそういうサービスとかその出口に繋いでいく時にどういうことを意識したり注意したりしてますか?
すごくシンプルにサービスとサービスを繋ぐみたいな意識はあんまり持ってなくて、どちらかというと人と人をつなぐイメージでサービスの出口を探すことが多いです。
僕が直接その繋がる先の支援者さんを知っているとか、実際その本人にもちゃんと会わせてもらってからじゃないと紹介がなかなか難しいみたいなことはお話させてもらう場面があって、そういう形で繋ぐことが多いですね。
なるべく顔が見える関係の中で一緒に繋がせてもらうことをできる限り意識してやっています。
– 確かに藤本さんって、電話口ではものすごく丁寧に自分の正体の説明もするし、どういう目的で紹介しようとしてるかっていうのを、すごくちゃんとしてますもんね。そしたらやっぱ受ける側の方も、だったらまあいけるかなとか、藤本さんがそこまで言うんだったら、ってなりますよね。
そうですね。ひいては繋がってくれる人が一番安心できるんじゃないかって思うので、そこはとても時間かかるんですけど、できる限り丁寧にするように意識しています。
– そういうことをしているとあれですね。どこかの学校に行った時とかにも廊下で次々声かけられるみたいな感じで「あー、あの時の藤本さん!」みたいな感じで。
そうですそうです(笑)。本当に顔が広く知られていくというか、ちゃんと地域で相談としてやっていけてるみたいなところが、ビバークとしてもう少し力を入れていけたらいいなって思うところでもありますね。
– いやあ、さすがです。
相談支援に対するイメージの補正
(高木)
– 具体的なケースの話っていうのはなかなかしにくいと思うんですけど、この特集記事を見てもらうことによって悩んでる人がそういう解決方法もあるんだ、みたいなことが出せるようなことがあればいいなと思ってるんですけど、ケースワークの中でこんな対応してみました、ちょっとうまくいきました。みたいなエピソードなどはありますか?
(藤本)
児童と成人によって少しその質とか内容が変わる気がするので、それぞれでお答えできたらなと思うんですけど。
成人の場合は、相談してくださる主体がご本人になってご家族がどっちかていうとバックに控えててくださるような状況になるので、本当にご本人と一緒に動くていう経験を通して世界が広がっていくと思っていますし、例えばこの前、一緒に市役所に行っていろんな手続きを一緒にさせてもらうっていうのがあって。本来であればヘルパーさんだったりサービスを利用しながら出来るけれども、まだヘルパーさんていうのを使ったことがない、みたいな時に相談員が一緒に行って、今日やったことを全部ヘルパーさんとだったら一緒にできますよと言うと本人にもイメージがつきやすいし、ご家族もこんな感じでやってくれるんだったらじゃあ使った方がいいね、みたいな理解をしてくださるので、そこの入り口としてはすごく有効なのかなって思ってます。
そういうのを知ってもらえると、そういうことも相談ってやってもらえるんだっていうのは分かってもらえると使ってもらいやすいのかな?って思ってますね。
児童のケースの場合はその相談してくださる主体が保護者の方になるので、本当にあの最初も話させてもらったような学校のこととか生活のこととか、家の中のことを相談できるんだっていうのを知ってもらえてることっていうのはすごく大事なのかなと思っていて。
うちの事業所を契約させてもらう時にパンフレットを使って生活のことだったりとか、例えば将来お金のこととかもやっぱり困るだろうから、僕が直接は支援できなくてもそういう支援機関に繋げることができるという説明をする時「え〜!?」ってみなさんリアクションされるんですよ。
「こんなんも相談していいんですか!?」みたいな。やっぱりそこで驚く方たちは多かった印象があるので、まだもちろん福祉サービスじゃないからちょっとどうなんやろう?って思われることもあるかもしれないんですけど、1回聞いてみるっていうのはすごく大事なのかなと思っていて。
それと同時にいろんな相談員さんがそういう相談ってやっぱあるんだな、みたいなことを地域の中でも分かってもらえると、ワンストップでできる体制づくりっていうのはこういう困りごとがあるケースではすごく大事だと思っているので、そういうことが作っていけると児童の分野は良いのかなって思ってますね。
– 成人の方ってね。経験がないとなかなかイメージもつきにくいっていうところに、きちんと実体験として寄り添うみたいなことって大事だし。逆にそんなことまでしてくれるんだってことになるだろうし、相談って本来そうあるべきだと思うし、それが仕事だと思うんですけどね。
スタンスとして大切なのは“諦めの悪さ”
(高木)
– ちょっと話が変わるんですけど、冒頭に、草津に来て相談を始めて、しんどいこともあったかなと思うんですよ。
藤本さんも私も前はこの湖南地域以外で相談支援やってたじゃないですか?で、やっぱり行政が変わると手続きが違ったりとか、職員とのやり取りの温度感の違いみたいなものは絶対あると思うんですけど、それが違うからしんどい!みたいなこと言ってても僕はそんなことはしょうがないと思ってるんです。
どっちかというと地域が変わっても相談支援専門員も、ココは絶対大事にブレずにしたい!ていうところをきちんと持っていないとダメなんじゃないかと思うんですけど、藤本さん的にその地域が変わってもどこで相談するにしても必要な相談員の資質やったり想いってどういうものだと思っていますか?
(藤本)
そうですね。まず前提として行政区が変わるとこんなにも手続き違うのか?ていうのが、すごくありますね。そこはやっぱり日本全体の現状としてあるんだなっていうのをこの半年ひしひし感じた上で、なんですけど。
それで今質問してくださった「変わらない本質」みたいなところを考えた時に、どこに住んでいてもどんな状況であってもその人が住みたい地域で安心して過ごすことができる。で、その上でこんな風に生活したい、こんなことを自分は思っているっていう、その希望とか幸せの形に向かって一緒にお手伝いをさせてもらうっていうのが、相談員の福祉全体の姿勢な気がしていて、そこに尽きるんだろうなって思ったので、変わらない思いみたいなところはそこがすごくあるのかなって思いましたね。
ただ状況として、住んでいる地域によって制度の取り扱いが違ったりとかこっちではいいけど、こっちはダメみたいなことってやっぱ往々にしてあるんですけど、1つなにか相談員の姿勢っていうか、スタンスとして大事だなって思ったのは「諦めの悪さ」かなって思って。
1回ダメって言われたからもう全部ダメでしたで返すのではなくて、じゃあなんか違う方法はないかとか。その利用してくださる人がこんな形ってどうだろうか?みたいなのを一緒に考えながら、行政だったりとか、支援者の人と相談をしながら支援の形を作っていくみたいなそういうスタンスが相談員にあると、縦割りにならずに、よく制度の狭間に落ちるみたいな話があるんですけど、そこをなんとか組み立てていく仕組みが相談員がきっかけで作れることができるのかなと思うので、そういう思いは大事にできたらいいな、必要なのかなって思います。
– その相談員の本質でっていう質問だったんですけど、藤本さんからまず一言目にやっぱり利用者さんが住み慣れた地域っていう言葉が出てきたのは僕ちょっと今感動的で、すごいなって。やっぱりどこまでいっても「利用者さんファースト」なんだなって思いました。
あと、その後の「諦めの悪さ」みたいなのってきっと相談員にしかできないんだろうなと思うんですよ。
サービスを提供する、他のその例えばヘルパーだったりとか、放課後デイみたいなところも、もうできるかできないかでしかなくて「うち5時までなんです。ごめんなさい。」て言うしかないし、で、かたや行政の職員さんも多分法律の解釈上、良いか悪いかぐらいしか言いようもないから、利用者さんに寄り添って、そこをなんとか!っていうのは相談員にしかできないよなって思うんですよね。それって利用者さんからしたらとても心強いなって思いました。
じゃあ、これからは諦めの悪い人をどんどん相談員として増やしていかないとダメですね(笑)。
そうですね(笑)。なんかこうあの手この手で作戦を考えていけるみたいなのは1つ資質として必要なのかなって。
あとは少しさっきの話に付け加える形になるんですけど、答えのないものを探し続ける作業が相談員には多いなって思っているので、ビバークの理念に近いんですけど、「見つからないものを一緒に探していく。」そのプロセスを楽しめるかどうかっていうのはやっぱりすごく大事だなと思っているんです。
この間、役所に行ってもダメ。どこに行ってもダメ。全員がダメていうような状況の中で、じゃあ次の手はこれで行くかみたいなのを楽しみながら取り組めるっていう気持ちの持ち方は、相談員を目指す人とかにあるとしんどくなりすぎずに相談員という仕事ができるのかなっていうのは思います。
– パンフレットの中に書いてますもんね。「見つからないものを一緒に探します。」
必ずしもね、どのタイミングで答えが出てくるっていうのはないですからね。そういう見つからない宝物を一緒に探せる諦めの悪い相談を増やしていくということもあるんですけど、最後にビバークのこれからを聞かしてもらえたらなと思います。
ビバークの経営がどうとかみたいなことは別にして、今の相談支援の現状とビバークがやっていることをこれからさらにどうしていきたいのか、っていうのを自由に語っていただけたら嬉しいです。
まず相談支援という事業の話でいくと、今お伝えしたような相談員っていうのが増えるとすごくいいなって思います。今、草津の中で相談をやらしてもらって、相談支援事業を利用したいけど利用できない人がやっぱり多くいらっしゃる状況の中で、少しでもこのビバークという事業所がその人たちのお手伝いができるところが増えるといいなって思うので、今実践しているような支援を引き継いでやってくれたりとか、同じような考え方を持って利用者さんの支援ができる人をまず増やす。相談員が増えていくということが1つのテーマかなって思います。
支援を通じてこの地域と一緒に新しい福祉のあり方を考えていくみたいな。そういう一面が相談支援の中にはあって、そういう地域作りみたいなところにビバークが入っていけると利用者さんの実際困っていることをベースに新しいサービスをやったりだとか仕組みが作っていけるようなきっかけになるのかもなとこの半年間やっていて思うので、そういう取り組みが今後一緒にno-deっていう法人を通して、そういうところにも繋がっていけるとすごく素敵やな、と思います。
最終的には利用してくださる人にも繋がっていくなって思っているので、相談支援事業としてその2つをこの1年間ぐらいで見えるところまで行きたいなって思ってます。
– 単純に相談支援専門員、相談支援事業所は足りてないので自分たちがそこで力を出せるところがあればだし、それだけじゃない全体地域見回せるというのはほんと相談支援のいいところだし、それきっかけでより良い、より暮らしやすい地域をみたいなのはビバークの宿命な気がしますね。
素晴らしいと思います。
ほんとどんだけ働かなあかんねん!(笑)って感じですけどね。でもとにかく仲間を作らないとって思いますね。めっちゃ思います。
– いや、今日はお話聞けてほんとに良かったです。半年このインタビューの機会を寝かしておいてよかったです。実際の開所の時にお聞きするような内容だったら、具体的にここまで出てこない気もするし、内容の濃い話を聞けて良かった。
たしかに。こちらも改めて考える機会になったので、質問していただけてよかったです。
– じゃあインタビューはこれで終わります。
また、半年、1年経った時にパワーアップしたビバークの様子をまた聞かせてもらえたら嬉しいです。
今日はありがとうございました。
ありがとうございました。